広告やマーケティングに生成AIを使う会社は増えてきました。けれど、「実際に成果は出ているのか」「どんな使い方なら数字が伸びるのか」となると、話題になった事例は見つかっても、成果の数字までは分からないことが多いはずです。
この記事では、成果の数字が公開されている事例だけを集めました。出典は、各社の発表、Meta・Google・TikTok・Amazon Adsなどの公式の事例、広告賞の公式ページです。数字は、何と比べた結果なのかも合わせて書いています。最後に、失敗した例と、自社で始めるときの進め方も紹介します。
事例から見える、AIの3つの使い方

集めた事例を並べると、AIの使い方は大きく3つに分かれます。
| 使い方 | 何をAIに任せるか | この記事の事例 |
|---|---|---|
| 広告の素材を作る | 画像・動画・コピーの作成、背景の差し替え、言語の翻訳 | JAL、Klarna、Zalando、MAM、WD-40、Dandy Blend、Crocs、Living Proof、Zanskar Health、PRESS Healthfoods、FULLBEAUTY Brands、伊藤園、Kraft Heinz |
| 配信と入札を任せる | 誰に、どの素材を、いくらで出すかの判断 | 大和コネクト証券、レバレジーズ、ヴィレッジハウス・マネジメント、楽天グループ、MonotaRO、KINTO |
| 効果を予測して選ぶ | 配信する前に、どの素材が効きそうかを当てる | サントリーウエルネス |
日本の公開事例は、今のところ2つ目の「配信と入札を任せる」が中心です。生成AIで素材を作って成果の数字まで公開している日本の事例は、まだ多くありません。海外では、素材づくりに生成AIを使った事例が、媒体の公式の事例として数多く出ています。
使い方1:広告の素材をAIで作る
素材をAIで作ると、変わることは2つあります。1つは作る速さと費用、もう1つは素材そのものの成果(クリックや購入)です。事例も、この2つに分かれます。
作る速さと費用が変わった事例
| 企業(国・業種) | AIで何をしたか | 変わったこと | 比べた相手 |
|---|---|---|---|
| Klarna(スウェーデン・決済) | 画像の作成・補正、コピー、翻訳をAIで社内で行うようにした | 画像制作の期間が6週間から7日に。画像の制作費は600万ドル減り、外部の代理店費は25%減った | AIを使う前 |
| Zalando(ドイツ・ファッションEC) | キャンペーンのビジュアルをAIで作った | 2024年10〜12月の素材の約70%がAI生成。流行に気づいてから24時間以内に制作 | — |
この表から言えること:AIで一番大きく変わるのは、制作にかかる期間です。Klarnaは6週間が7日に、Zalandoは流行から24時間以内になりました。作る本数を増やしても費用が増えにくいので、素材をたくさん試したい会社ほど、効果が大きくなると考えられます。
素材の成果が上がった事例
何をAIで作ったかで分けると、次の3つです。
| 作ったもの | 企業(国・業種) | 成果 | 比べた相手 |
|---|---|---|---|
| 客層ごとに作り分けた素材 | 日本航空(日本・航空) | CTR 3.92% | 通常時のCTR(その3倍以上) |
| 動画 | MAM(オーストリア・ベビー用品) | カート追加+39%、カート追加1件あたりの費用-28% | これまでの制作物 |
| 動画 | WD-40(フランス市場・家庭用品) | 1日あたりの平均売上+50%以上 | 配信する前 |
| 画像の背景・バリエーション | Living Proof(米国・ヘアケア) | 購入単価-16%、購入数+18% | AIを使わない通常の設定(A/Bテスト) |
| 画像の背景・バリエーション | Zanskar Health(インド・ウェルネス) | 購入単価-64% | 通常の素材 |
| 画像の背景・バリエーション | PRESS Healthfoods(英国・健康食品) | 購入単価-33%、商品の売上+40% | AIを使わない通常の設定 |
| 画像の背景・バリエーション | FULLBEAUTY Brands(米国・アパレル) | ROAS+45%、CVR+22% | 通常のカタログ広告 |
| 画像の背景・バリエーション | Crocs(米国・靴) | 購入単価-4.7%、購入数+4.7% | AIを使わない通常の設定 |
| 画像の背景・バリエーション | Dandy Blend(米国・飲料) | CTR 0.6%→1.1%、CV 481→1,055件 | AI画像を使う前 |
この表から言えること:成果の数字が大きいのは、誰に向けて作るかを決めてから作った素材(JAL)と、作る手間が大きい動画(MAM、WD-40)です。画像の背景やバリエーションの自動生成は、手軽に試せる一方で、効果の幅が大きく開いています。まず一部の広告で比べてから広げるのが安全です。
画像の背景やバリエーションは、Metaの「Advantage+ クリエイティブ」やAmazon Adsの機能で作った事例です。同じ機能でも、購入単価の下がり幅は-4.7%から-64%まで開いており、商品や元の素材、配信の条件で結果は変わります。
話題とブランドを狙った事例
| 企業(国・業種) | 何をしたか | 成果 |
|---|---|---|
| 伊藤園(日本・飲料) | テレビCMに、生成AIで作った「AIタレント」を起用 | 日経ブランドジャパンの順位が175位から29位に。売上との関係ははっきり出ていないと担当者 |
| Kraft Heinz(カナダ・食品) | 画像生成AIに「ケチャップ」と入れると、Heinzらしい瓶が出ることを見せたキャンペーン | 8.5億を超えるアーンドインプレッション、エンゲージメント率は過去のキャンペーンより+38% |
この表から言えること:話題やブランドの評価は大きく伸びています。ただ、伊藤園の担当者が話すように、売上につながったかは別に確かめる必要があります。話題を狙うのか、獲得を狙うのかを、作る前に分けて決めます。
テレビCMをAIで作った事例は、AI CMの事例と作り方で紹介しています。
(使い方1の出典:Klarna 公式発表、Zalando 公式、Google「AI Excellence Awards」の事例、Amazon Ads の事例 MAM・WD-40・Dandy Blend、Meta for Business の事例 Living Proof・Zanskar Health・PRESS Healthfoods・FULLBEAUTY Brands・Crocs、AINOW 伊藤園への取材、The One Show「A.I. Ketchup」)
使い方2:配信と入札をAIに任せる
TikTokの「Smart+」、Metaの「Advantage+」、Googleの「P-MAX」は、誰に、どの素材を、いくらで出すかをAIが決める仕組みです。日本の公式事例は、この使い方が中心です。
| 企業(業種) | 使った仕組み | 成果 | 比べた相手 |
|---|---|---|---|
| 大和コネクト証券(証券) | TikTok Smart+ | 口座開設の申込が1.9倍、CPA-14.5% | Smart+を使う前 |
| レバレジーズ「レバクリ」(オンライン診療) | TikTok Smart+ | CTR+147%、CPA-34% | 同じ訴求の手動キャンペーン |
| ヴィレッジハウス・マネジメント(賃貸) | Meta Advantage+ ショッピング | 購入単価-60% | 通常の手動の広告 |
| 楽天グループ(EC) | Meta Advantage+ カタログ広告 | ファッションの店舗でCVが2.2倍に増加 | 広告を見ていない人(コンバージョンリフト調査) |
| MonotaRO(BtoB EC) | Google P-MAX | ROAS+48%、新しい法人のお客様+44% | 従来のショッピングキャンペーン |
| KINTO(車のサブスク) | Google 検索広告のAI | 新規の申込+25.6%、CPA-34.5% | 前年の同じ期間 |
この表から言えること:日本の公開事例は、この使い方が中心で、6件とも手動や従来の方法より良い結果です。ただし比べ方はそろっておらず、同じ時期に並べて比べたのはレバクリなど一部です。成果を左右するのは、AIに渡す素材の本数と、成果の計測の正しさです。
(使い方2の出典:TikTok「大和コネクト証券」、TikTok「レバクリ」、Meta for Business ヴィレッジハウス・マネジメント・楽天グループ、Google「P-MAX」事例、Google「AI Excellence Awards」の事例)
媒体のAIは、良い素材が何本もあってはじめて力を出す仕組みです。大和コネクト証券も、最大30本の動画を用意して、その中から組み合わせをAIに選ばせています。日本の事例を、比べ方の違いも含めてくわしく見るなら、広告の自動化AIで成果が出た日本の事例をご覧ください。
使い方3:効果をAIで予測して、素材を選ぶ
配信する前に、どの素材が効きそうかをAIで当てる使い方です。
| 企業(業種) | 使った仕組み | 成果 | 比べた相手 |
|---|---|---|---|
| サントリーウエルネス(健康食品の通販) | サイバーエージェントの「極予測AI」で、背景・コピー・画像の要素ごとに効果を予測 | CVR 170%改善、CV数も大きく増加 | 既存の素材 |
この表から言えること:予測は、配信で試す前に候補を絞る使い方です。作れる素材の数が多いほど、絞る価値が上がるので、使い方1(素材をAIで作る)と組み合わせると効きます。
(出典:サイバーエージェント 事例)
ここからは、3つの使い方から6つの事例を選び、公式のページとあわせてくわしく見ていきます。
Klarnaの事例:画像の制作が6週間から7日に(使い方1・速さと費用)
Klarnaは、画像の作成と補正にMidjourney、DALL·E、Fireflyなどの生成AIを使い、2024年1〜3月だけで1,000枚を超える画像を作りました。画像の制作の期間は6週間から7日に縮み、画像の制作費は600万ドル減っています。速くなった工程には、ブランドに合っているか、品質、法務の確認も含まれています。
学べること:AIで速くなるのは「作る」だけではありません。確認の工程まで含めて組み直すと、期間が大きく縮みます。

日本航空の事例:自社のデータで客層ごとに素材を作り分けた(使い方1・素材の成果)
日本航空は、自社のデータからロイヤル層以外のお客様を分け、その関心に合わせた広告の素材をGeminiなどで作って、デマンド ジェネレーションで配信しました。CTRは3.92%で、通常時の3倍以上になっています。
学べること:誰に向けた素材かを決めてからAIで作ると、AIの量産が成果につながりやすくなります。

MAMの事例:AIで作った動画で、カート追加が39%増えた(使い方1・素材の成果)
ベビー用品のMAMは、Amazon AdsのAIで動画の素材を作り、プライムデーの期間に配信しました。従来の方法で作った素材と比べて、カートへの追加が39%増え、追加1件あたりの費用は28%下がっています。
学べること:動画は、作る手間が大きい分、AIで作る効果も大きい素材です。

Living Proofの事例:AIあり・なしをA/Bテストで比べた(使い方1・素材の成果)
ヘアケアのLiving Proofは、商品の画像の背景をMetaの生成AIの機能で作り、通常の設定とA/Bテストで比べました。購入単価は16%下がり、購入数は18%増えています。18〜24歳では、購入単価が43%下がりました。
学べること:AIの効果は、同じ時期に並べて比べると確かめられます。年代ごとの差も、比べてはじめて分かります。

レバクリの事例:Smart+と手動のキャンペーンを同時に比べた(使い方2)
オンライン診療の「レバクリ」は、TikTokのSmart+と、同じ訴求の手動のキャンペーンを同じ時期に配信して比べました。Smart+の方が、CTRは147%高く、CPAは34%低い結果でした。
学べること:配信をAIに任せるかどうかも、手動と並べて比べて決められます。

サントリーウエルネスの事例:配信の前に、効きそうな素材をAIで当てた(使い方3)
サントリーウエルネスは、広告の素材の効果を、背景・コピー・画像の要素ごとにAIで予測し、制作の担当者に勝ちそうな素材を勧める仕組みを使いました。既存の素材と比べて、CVRは170%改善しています。
学べること:AIは「作る」だけでなく、「どれを出すか選ぶ」にも使えます。

当社の受託案件での実績
Zideaを運営する株式会社zokujinも、自社で受託している広告の運用で、AIで作った動画を使っています。Meta広告で月約560万円を配信した約3か月の運用で、週ごとに動画を入れ替えて改善し、CPAは24,000円から14,800円(-38%)、CVRは1.8%から2.6%(+44%)になりました。広告費が同じなら、CVは月約230件から約380件に増えた計算です(広告費とCPAから計算した目安)。
この案件では、以前は撮影して動画を作っていたため、費用の面で比べられるのは1本ずつでした。AIで作るようにしてからは、同じ費用で約20本を試せるようになっています。
成果が出た事例に多かったこと
この記事の20の事例を見比べると、成果が出た事例には、次のことが多く見られました。どれも、すべての事例に当てはまるわけではありません。
| 見られたこと | 事例 |
|---|---|
| AIあり・なしを比べて確かめている | Meta・TikTokの事例の多くは、通常の設定や手動のキャンペーンと同じ時期に比べた数字(Living Proof、Crocs、レバクリなど) |
| 自社のデータをAIに渡している | JALは自社の客層のデータで素材を作り分け、KINTOも自社のデータを検索広告のAIに使っている |
| 作る速さと本数が上がっている | Klarnaは画像制作が6週間から7日に、Zalandoは流行から24時間以内に制作 |
| 数字の出る指標で見ている | 広告想起や話題になったことだけでなく、購入単価・CVR・ROASで評価している |
反対に、伊藤園の事例のように、ブランドの評価は上がっても売上との関係ははっきりしないこともあります。目的が「話題」なのか「獲得」なのかで、見るべき数字は変わります。
うまくいかなかった例から分かる注意
生成AIの広告では、批判を受けて取り下げた例もあります。
| 企業 | 何が起きたか |
|---|---|
| 日本航空(JAL Luxury Card、2025年8月) | 紹介ページの生成AIの画像で、フォークの形や実物と違うカードなどの不自然さが指摘され、画像を差し替えた |
| ウテナ(2026年5月) | 全編を生成AIで作ったアニメと交通広告が、既存のアニメに似ていると指摘され、謝罪して動画の削除と交通広告の撤去をした |
| マクドナルド オランダ(2025年12月) | 生成AIで作ったクリスマスの広告が「不気味」と批判され、数日で削除した |
(出典:ITmedia「JAL Luxury Card」、ITmedia「ウテナ」、NBC News「McDonald's」)
公開の前に、人の目で不自然な部分、ほかの作品への似すぎ、商品との違いを確かめることが欠かせません。
自社で始めるときの進め方
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1. 目的と指標を決める | 獲得なら購入単価・CPA・ROAS、認知なら広告想起など、比べる数字を先に決める |
| 2. 小さく比べる | 今の素材と、AIを使った素材を同じ時期に出して比べる。MetaやGoogleのA/Bテストの機能を使う(広告のABテストのやり方) |
| 3. 素材の本数を増やす | 媒体のAIに任せるほど、選ばれる素材の本数が要る。訴求や冒頭を変えたパターンを用意する |
| 4. 公開前に人が確かめる | 不自然な部分、商品との違い、ほかの作品との似すぎ、広告の表現のルールを確かめる |
| 5. 勝った素材を基準に次を作る | 結果を見て、勝った素材を元に次の比較をする |
比べるための素材を、何本も用意するには
ここまでの事例で、成果の差を生んだのは「AIを使ったかどうか」そのものよりも、比べられるだけの素材を用意し、数字で確かめたかどうかでした。媒体のAIに配信を任せるほど、素材を作る側の本数が足りなくなります。
当社が提供している動画広告AIのZideaは、この素材づくりを受け持つツールです。商品のLPのURLを入れると、AIが訴求軸を分析し、台本と絵コンテから動画広告まで作ります。冒頭や訴求を変えたパターンもまとめて作れるので、手順の2と3がそのまま回せます。台本・映像・テロップ・演出は自分で直せるので、手順の4で見つけた不自然な部分も、その場で差し替えられます。
上で紹介した当社の受託案件も、こうして作った動画を週ごとに入れ替えて回したものです。
試すには無料アカウントの作成が必要です。新規登録すると絵コンテを1本無料で作れます。動画は7日間の無料トライアルがあります。

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まとめ:生成AIを広告に使う前のチェックリスト
- 目的(獲得か、認知か)と、比べる数字を決めたか
- 今の素材とAIの素材を、同じ時期に比べる準備をしたか
- 媒体のAIに任せるなら、選ばれるだけの素材の本数を用意したか
- 自社のデータ(客層、購入の履歴など)をAIや媒体に渡せるか確かめたか
- 公開の前に、不自然な部分、商品との違い、ほかの作品との似すぎを人が確かめたか
- 勝った素材を基準に、次の比較を続ける予定を立てたか



