動画生成AIで作った動画を、そのまま広告に使ってよいのか。ツールの説明に「商用利用OK」と書いてあっても、無料プランでも使えるのか、著作権や広告の審査は大丈夫なのか、判断がつかない。AIで動画広告を作り始めたマーケティング担当者が、配信の直前で手を止める場面です。
この記事では、主な動画生成AIの商用利用の条件を規約の原文で比べたうえで、広告に使うときに確かめる著作権・肖像・景品表示法・広告媒体のルールを、実務の確認手順に落とし込んでまとめました。
「商用利用OK」だけでは広告に使えない:確かめる3つの段階
ツールの「商用利用OK」は、そのツールの会社が「作った動画を商売に使ってよい」と認めている、という意味にすぎません。広告として配信するには、ほかにも確かめることがあります。実務では、次の3つの段階で確かめます。

| 段階 | 何を確かめるか | 確かめないと起きること |
|---|---|---|
| 1. ツールの規約 | 使っているプランで商用利用が認められているか。透かしは入るか | 無料プランで作った動画を広告に使い、規約違反になる |
| 2. 法律 | 既存の作品に似ていないか(著作権)、実在の人物に似せていないか(肖像)、誤解を招く表現がないか(景品表示法) | 権利者から差止めや損害賠償を求められる。行政から措置を受ける |
| 3. 広告媒体のルール | 配信先の媒体で、AIで作ったことの表示が必要か | 広告が審査で却下される。配信が制限される |
1つ目はツールを選ぶ段階で、2つ目と3つ目は動画を作ってから配信するまでの段階で確かめます。以下、この順に説明します。
主な動画生成AIの商用利用の条件
主な動画生成AIについて、各社の利用規約・料金ページ(2026年10月時点)で、広告に使うときに関係する条件を確かめました。
| ツール | 無料プランで作った動画を広告に使えるか | 広告に使うためのプラン | 来歴・透かし |
|---|---|---|---|
| HeyGen | 使えない(規約で広告への利用を禁止) | 有料プラン(Creator 月29ドル〜) | 他者に配布するときは、法令に従いAIで作ったことの開示が必要 |
| Luma Dream Machine | 使えない(有料契約の期間中に作った動画だけ商用利用可) | 商用利用の権利が付いた有料プラン | 透かしや来歴情報を埋め込む権利が同社にある |
| Kling AI | 規約に明記なし | 有料会員(商用利用に制限なしと明記) | 透かしの除去は会員の特典 |
| Hailuo(MiniMax) | 規約に明記なし(無料は透かし入り) | 有料プラン(Standard 月14.99ドル〜) | 有料プランは透かしなし |
| Runway | 規約では出力の商用利用を制限しない | 年払いで月12ドル〜の有料プランもある | 公式の記載を確認できず |
| Adobe Firefly | 公式に「Firefly のモデルの出力は商用利用できる」と記載 | Standard 月9.99ドル〜 | Content Credentials(来歴情報)が付き、除去は禁止 |
| Google(Gemini アプリの動画生成) | 動画生成は Google AI プランが必要 | Google AI プラン | 目に見えない電子透かし(SynthID)が入る |
(出典:HeyGen 利用規約、Luma 利用規約、Kling AI 有料サービス規約、Hailuo 支払いポリシー、Runway 利用規約、Adobe Firefly プラン、Gemini アプリ ヘルプ、Google 利用規約)
なお、OpenAIの動画生成AI「Sora」は、アプリとWebの提供を2026年4月26日に終了しています(出典:OpenAI ヘルプ「Sora の提供終了について」)。比較記事などで今も紹介されていることがありますが、これから広告用に使うツールの候補にはなりません。
規約を読むときに見る3つのポイント
- 無料プランの扱い:HeyGenは無料プランで作った動画を「広告」に使うことを名指しで禁止し、Lumaは有料契約の期間中に作った動画だけを商用利用できるとしています。広告用の動画は、有料プランで作るのが基本です。
- 生成物の権利:Lumaは出力の権利を利用者に譲渡すると明記し、Googleは利用者が生成したコンテンツの所有権を主張しないとしています。一方で、Runwayのように、利用者が入力した素材や出力をサービスの改善に使えるとしているツールもあります。社外秘の素材を入れる前に確かめます。
- 透かしと来歴情報:無料プランの動画には透かしが入ることが多く、Adobe FireflyやLumaは来歴情報を付け、その除去を禁止しています。透かしや来歴情報を消して配信するのは避けます。
規約は頻繁に変わります。広告に使う前に、その時点の規約を確かめ、確かめた日と内容を記録しておきます。
著作権:既存の作品に「似ていて」「元にしている」と侵害になる
文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)では、AIで作ったものも、通常の作品と同じように、既存の作品との類似性(表現の特徴が似ている)と依拠性(既存の作品を元にしている)の両方が認められると、著作権侵害になると整理しています。侵害になれば、権利者は配信の差止めや損害賠償を求めることができます。
広告用の動画を作るときに、実務でできる予防策は次のとおりです(出典:文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」、2024年7月)。
- プロンプトに作品名・キャラクター名・作家名を入れない:特定の作品の題名などを入れると、既存の作品を元にしたこと(依拠性)が認められやすくなります。「〇〇風」の指示も避けます。
- 配信前に、似た作品がないか検索する:画像検索などで、既存の作品に似ていないかを確かめます。似ていなければ、権利者の許諾は不要です。
- 作った過程を記録する:既存の作品を元にしていないと説明できるよう、プロンプトや生成の過程を残しておきます。
- 他社の素材を入力しない:権利を持っていない画像や動画を入力して、似た動画を作らせると、侵害になるおそれがあります。
もう1つ知っておきたいのが、AIで作った動画には著作権が発生しないことがある点です。文化庁の考え方では、AIへの指示がアイデアにとどまる場合は、著作物とは認められないとされています。人が加筆や修正をした部分は、通常、著作物と認められます。つまり、AIで作っただけの動画は、他社に似たものを作られても守れない場合があります。自社の広告の型として守りたい表現は、人が手を入れて仕上げます。
肖像権・パブリシティ権:実在の人物に似せない
内閣府の知的財産戦略本部「AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ」(2024年5月)では、生成AIが関わる場合も、肖像権・パブリシティ権の判断の基準は通常と同じで、生成AIに特有の問題はないとしています。パブリシティ権は、有名人の肖像などを、その人の集客力を利用する目的で使う場合に問題になり、広告に使うことはその典型例として挙げられています。
(出典:内閣府「AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ」)
実務では、次の3つを守ります。
- 有名人や実在の人物に似せた人物を作らない:プロンプトに実在の人物の名前を入れない。生成された人物が特定の人に似ていたら使わない。
- 社員やモデルの写真・声を使うときは同意を取る:実在の人物の写真や声を元にAIで動画を作るときは、本人から、合成・加工すること、広告に使うこと、使う期間について同意を取ります。
- ツールの規約も確かめる:HeyGen、Runway、Luma、Adobe Fireflyなど主なツールの多くが、同意のない人物の画像のアップロードや、なりすましを禁止しています。
景品表示法:AIの人物に、ありもしない体験を語らせない
AIで作った人物が商品を紹介する動画広告は、作り方を誤ると景品表示法に触れるおそれがあります。
- 効果を実際より良く見せない:商品の品質などを、実際より著しく良いと見せる表示は、景品表示法の優良誤認表示にあたります(出典:消費者庁「優良誤認とは」)。AIの映像で、使用前後の変化を誇張しないようにします。
- 体験談をねつ造しない:消費者庁は健康食品の広告について、体験者がいないのに体験談やコメントをねつ造することを、虚偽誇大表示の例に挙げ、「個人の感想です」と注記しても判断は変わらないとしています(出典:消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」)。AIの人物に「3か月使ってこう変わった」のような、実在しない体験を語らせないようにします。
- 広告であることを分かるようにする:広告であるのに、消費者が広告だと分からない表示は、ステルスマーケティングとして規制されています(出典:消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」)。
AIの人物に話させる台本は、商品の事実と、実際に集まったお客様の声の範囲で書きます。たとえば「レビューで多かった声は〇〇です」のように、事実として言える形にするのが安全です。
広告媒体のルール:AIで作ったことの表示が必要か
AIで作ったことを表示する義務は、媒体と広告の種類によって違います(2026年10月時点の各媒体の公式ヘルプ)。
| 媒体 | 表示が必要な広告 | 内容 |
|---|---|---|
| TikTok | 広告全般 | すべてAIで作ったもの、実在の人物がしていない行動を描いたもの、AIの声で言っていないことを言わせたものには、AIGCラベルか、分かりやすい注記・字幕・透かし・ステッカーが必要。表示がないと広告は却下・制限される |
| Meta(Facebook・Instagram) | 政治・選挙・社会問題の広告 | 写実的な映像や音声を他社の生成AIで作成・編集した場合に開示が必要。一般の広告では、Metaの生成AI機能で作った広告画像に「AI情報」ラベルが付くが、他社のAIツールで作った広告は対象外 |
| Google広告 | 選挙広告 | 実在の人物や出来事を不正確に描く合成・改変コンテンツには開示が必要 |
(出典:TikTok 広告ポリシー、Meta「AI情報」ラベル、Meta 社会問題・選挙・政治の広告、Google 政治広告ポリシー)
商品やサービスの通常の広告で、表示の義務がはっきり書かれているのはTikTokです。TikTokにAIで作った動画広告を出すときは、AIGCラベルを付けるか、動画の中に「AIで作成しています」と入れます。媒体のルールは頻繁に変わるため、配信のたびに最新のヘルプを確かめます。
実務での確認手順:AIで動画広告を作ってから配信するまで
ここまでの確認を、実際の制作の流れに組み込むと、次のようになります。

| 段階 | 確認すること | AIでどう速くするか |
|---|---|---|
| 1. ツールを選ぶ | 有料プランで商用利用できるか。透かしと来歴情報の扱い | 規約の該当箇所をAIに要約させ、記録に残す(判断は原文で) |
| 2. 台本を書く | 効果を誇張していないか。実在しない体験談を語らせていないか | レビューやLPから、事実として言える言葉をAIに抜き出させる |
| 3. 動画を作る | プロンプトに作品名・人物名を入れていないか。他社の素材を入れていないか | プロンプトと生成の過程を自動で保存する |
| 4. 配信前に確認する | 既存の作品や実在の人物に似ていないか。広告であることが分かるか | 画像検索で似たものを探す。確認の項目をAIに一覧にさせる |
| 5. 配信する | 媒体ごとに、AIで作ったことの表示が必要か(TikTokは広告全般で必要) | 媒体ごとの表示の要否を、配信前のチェック項目に入れておく |
| 6. 記録する | 使ったツールとプラン、規約を確かめた日、プロンプト、確認した人 | 動画ごとに、作った過程と確認の結果をまとめて残す |
迷う表現があるときは、配信の前に法務や専門家に確認します。
動画広告をAIで作る:Zidea(当社サービス)
当社(株式会社zokujin)が運営するZideaは、LPのURLを入れるだけで、AIが訴求軸の分析から台本・絵コンテ・動画広告の制作までを行う、動画広告に特化したサービスです。AIアバター、映像生成、編集、効果音やモーションなどの演出まで1つのツールで扱え、台本・映像・テロップ・演出は細かく編集できます。
Zideaの利用規約では、生成したコンテンツの権利は利用者に帰属し、商用目的で自由に使えることを定めています(第7条)。同時に、広告として配信する前に、景品表示法、薬機法、著作権法などの法令と、配信先の媒体の規約に合っているかを、利用者自身が確かめることも定めています。実在の人物の写真や声を使うときは、本人の同意が必要です(第8条)。この記事の確認手順は、Zideaで作った動画広告にもそのまま当てはまります。
(出典:Zidea 利用規約)

こんな広告動画が、URL ひとつで
まとめ:AIで作った動画を広告に使う前のチェックリスト
- 使っているツールとプランで、商用利用(広告への利用)が認められているか
- 無料プランで作った動画を、広告に使おうとしていないか
- 透かしや来歴情報を、消さずに配信しているか
- プロンプトに、作品名・キャラクター名・実在の人物の名前を入れていないか
- 既存の作品や実在の人物に似ていないか、配信前に確かめたか
- AIの人物に、実在しない体験や誇張した効果を語らせていないか
- 広告であることが分かるようにしているか
- 配信先の媒体(特にTikTok)で、AIで作ったことの表示をしているか
- 使ったツール、規約を確かめた日、プロンプト、確認した人を記録したか



